理系のキャリアを再考しつつ、色々と考える日記

少し変わったキャリアを歩んでしまった人が日々思うことをつらつらと書くblogです。

エントロピーの謎 -物理化学を意味不明にする用語

エントロピー、エンタルピー...熱力学には似たような名前でわかりにくい概念が登場する。特にエントロピーは、大学1年の授業で習うのであるがこれがまたわかりにくい。わかりにくくなる原因は以下の2つであると思う。

 

1. 一般用語としてのエントロピーの存在

エントロピーという言葉は世間的に流通している。エントロピー  ≒ 乱雑さは増加しる、人はほっておくと、無秩序な方向に向かう云々と哲学的に使われることもある。「なるほど、私たちの住む世界では、確かに乱雑さは増加していく。これが物理法則、数学によって結論付けられているのか。考えて導出した学者はすごいなぁ」と思う人もいる。しかし、これは論理の飛躍も良いところで、ただのアナロジーにすぎない。物理学で扱う、エントロピーと、哲学的に語られるものは別物と考えて方がよい。

 

2. dS = d'Q / T

中学や高校では教科書には、永久機関は作れないよ、これは熱力学の第2法則 が~と習うことがある。さらに、化学の教科書に熱の平衡の話もでてきて、ごちゃごちゃになる。結局、熱力学の3つの法則ってなんだっけ?となってしまう。そして、大学に入って、高校で習った内容を整理しない状態で、授業で第一法則を駆け足で習ったのち、「エントロピーは乱雑さを表す概念であり、dS = d'Q / Tと表現できる。乱雑さは増加し続けるということが...例えば、机の上はほったとくと、どんどん汚くなって、整理整頓されていない状態になる。これは一種の...」とか説明される。そして、あぁこの式は自分には理解できない、何か深遠なものなのだぁと思う。とりあえず、テストの為に式を丸暗記しようとする。だが、記述方法が様々であり以下のように式が沢山でてきて、もはや何が何だかよくわからなくなってしまうのである。

dS = d'Q / T,

⊿S = ⊿U / T,

⊿S  =⊿H / T, 

⊿S = ∫[T1, t2] Cp / T dT 

 

1.の哲学的な概念としてのエントロピー、2.の物理化学の概念としてのエントロピーの2つが組み合わさり、で、⊿Sって何よ?となってしまう。一方、ニュートン力学の3つの法則は中学校から教えられており、高校でも数式を習い、直観的でわかりやすい。

第1法則 : 慣性の法則、物体は何も影響を受けていない状態では、静止または等速度を続ける

第2法則 : ニュートン運動方程式、F = ma, a = dv / dt 

第3法則 : 作用・反作用の法則、F12 = - F21 

 

しかし、熱力学の法則となると、なんとなくイメージはつくのだが、高校ではエントロピーの概念が出てこない。

第1法則 :  エネルギー保存則

第2法則 :  ケルビン、クラウジウスの原理、永久機関は作れないとの記述など

第3法則 :  絶対零度にてエントロピーはゼロとなる

 

第1法則は大学受験でも活躍するし、第3法則も気体の状態方程式  PV = nRTで出てくる絶対温度絶対零度では分子運動はない等の習うのでイメージがしやすい。問題は、第2法則であり、高校では「まあ永久機関は作れないってことだよ」とか教科書にのっていたりするが、大学では様々な記述や表現があり混乱する。この第2法則がエントロピーと密接にかかわっている。さらに、大学では⊿U, ⊿G, ⊿H, ⊿S....と記号が導入され、世間では乱雑さは増加し続けるなど言われており、もはや何がなんだが、わからなくなり、熱力学でドロップアウトしてしまう。

これらの法則はエネルギーに関する経験を一般化したものであり、そして化学分野に適用させる為に便利な記号を導入したにすぎない。誤解を恐れずに言えば、第2法則にいったても、熱がほっとくと冷めていくこと(自発変化の方向性)を、一般化しているだけである。そして、化学に適用できるよう、いくらかの概念を考え、定量化できるように数学的記述で定義したのがエントロピーである。

高校レベルで直観的にわかりやすく考えると、熱の自発変化を考えるときに、

 

気体の状態方程式 : PV = nRT

熱力学の第1法則(エネルギー保存則) : U2 - U1 = W + Q

 

の2つの式から、熱の授受によって、かならず増減するようなパラメーターはないかなー、、、(上記パラメーターが色々と相互作用するので...)と考えたところ、S = ⊿Q / T だとうまく表現できるとわかった。

 

1) クラウジウスさんが、昔、断熱過程を研究しているときに式をこねくり回していると、⊿Q / Tという値が常に増減を表している

2) 便利なので皆がこの概念を使い始めた(記号はS、用途は計算テクニック)

3) さらに、解析を続けていくと、状態A → Bの場合は、Sa < Sbと証明できた

4) 分子レベルの研究がさかになり、分子の統計的アプローチがとられた

5) 動きまわっている分子の挙動をSによって表現できた、難しい式ができた

 

はっきり言って、乱雑さは関係ない...のちのち、後付で乱雑さとなった模様。。