理系のキャリアを再考しつつ、色々と考える日記

少し変わったキャリアを歩んでしまった人が日々思うことをつらつらと書くblogです。

2014年度ノーベル物理学賞

 今年度のノーベル物理学賞は日本人3名が受賞することになった。青色発光ダイオードが受賞の対象となった。今年度のノーベル物理学賞は、基礎理論・新発見ではなく、産業物が対象となっており、今までの物理学賞と趣が異なっていると感じている。

 中村氏は、青色発光ダイオードの理論や、それにつながる基礎発見をしたわけではなく、技術者、研究者として量産化への舵を切る為に必要な応用研究を行った。今までは、基礎研究がノーベル物理学賞の対象となっていたが、今回は応用研究である。それも、一企業の技術者としての仕事が受賞対象となっている。

 このノーベル賞は、湯川博士が受賞対象となった研究とは全く異なるタイプのノーベル賞であると感じる。博士の理論は、まさに天才物理学者が成し遂げた仕事といったところではあるが、中村氏の仕事は弱者の戦法を使って産業化への道を開いた仕事である。同じ物理学賞でも全く違う。

 個人的な意見では、中村氏へノーベル賞を与えたノーベル財団及び選考委員会の決断は非常に素晴らしいものであると思う。今までは基礎ばかりに焦点を置いていた賞が、応用分野も評価するようになったからである。それも、一企業の技術者を高く評価した。考えてみれば、ノーベルはダイナマイトを開発した応用屋であり、ノーベル賞の原点は応用にある。(それが理由かは知らないが、ノーベル数学賞はない。)よって、今後は中村氏のように応用化への舵取りをした人物を対象にするのは至極全うである。

 ノーベル賞は自然科学を学ぶものにとっては憧れそのものである。しかし、自然科学を学んだもの全てが公的な研究機関で働くわけではなく、企業勤めとなる。その場合は、応用研究・商品開発等の技術職に従事することとなる。研究機関を離れた彼らも仕事次第によってノーベル賞を受賞できるということが、今回の物理学賞で証明された。その意味でも非常に素晴らしいことである。(島津製作所は実験機器メーカーである為、田中氏の化学賞とも今回の受賞は異なると思う。)

 このように非常に素晴らしい今回のノーベル賞であるが、残念なことがある。日本のメディアの報道スピードが遅いことである。私は、このニュースをWall Street Journal / BBC で知った。スマートフォンの通知機能により、WSJ/BBCより、速報です、ノーベル物理学賞が決まりました! 日本人です、と知った。日経を始め、日本の各種メディアの報道スピードは、欧米のメディアより遅かった。非常に残念である。