理系のキャリアを再考しつつ、色々と考える日記

少し変わったキャリアを歩んでしまった人が日々思うことをつらつらと書くblogです。

バイオテクノロジーとゴールドラッシュ

2000年代、ヒトゲノムの解析が行われている時、バイオテクノロジー業界はさながらゴールドラッシュの様であった様だ。誰しもが、金塊-ヒトゲノムの完全解読を目指した。そして、ゲノムの解読は終わったもののまだまだ生命は未知の世界のままだ。

AGCTの4つの記号の羅列にしかすぎない、DNA。確かに解読の制度は著しく向上したし、生命の仕組み-生体内でどのようなことがおきているか、従来生化学が扱ってきた内容を分子レベルで理解できるようになった。しかし、分子生物学で扱っている分子はあまりに巨大すぎる。物理学が扱うシンプルなモデルと異なりあまりに複雑であり、謎にみちている。

以下に一例をあげる。

Levinthal's paradox - タンパク質のフォールディングに関する話である。タンパク質は複数のアミノ酸からなるが、(幾何学的、物理的に)とり得る構造は3 ^100 といった桁違いのオーダーになる。とてもではないがコンピュータではシミュレーションできない。しかし、タンパク質は一瞬で正しい構造に折りたたまれる。なんとも不思議なことだろうか。この本当の理由はまだまだわかっていないそうだ。

しかし、このような謎 -解き明かせればガンの治療に役立つかもしれないし、新薬を開発できるかもしれない、莫大な富を手に入れるかもしれない。研究者はこぞって難問に取り組んでいる。しかし、ごく一部の人を除いて富も名声も得られていない。

しかし、ゴールドラッシュで、リーバイスが莫大な利益を稼いだように、実験機器・試薬メーカーは、ゴールドラッシュ時のシャベル・ジーズンを提供した会社と同様ツールを提供し富を手に入れた。

アメリカではバイオベンチャーは盛んではあると聞くが、やはり大きい規模でバイオやっているという会社はまだまだ少ない。

小規模な会社が金塊を狙っているといった状況だ。そして、試薬・実験機器メーカーは統合の道へと進んでいる。次世代シーケンサーなんて、(市場の大きさのせいもあるが)3社ほどしか提供していない。その3社はかなり大きな企業である。もちろん、ゴールドラッシュで富を築いた会社だ。

バイオの時代はいつくるのか...まだまだわからない。